私が建築を志したきっかけは、中学生の時実家を建て替えたことでした。
林業をしていた父は自身で山から木を切り出し「100年もつ家をつくる」と言って腕利きの大工さんを探し5年がかりで実家を和風の家に建て替えました。
柱、梁は手刻みで、壁は竹を編み、土を塗り仕上げに漆喰や聚楽を塗る。新建材は使わず、自然からでき、自然に還る材料を使って建てられました。その頃、工事中の現場を見るのが好きで今でもそのときの光景が目に焼き付いています。
その時代、周りでは住宅メーカー系の流行りのデザイン、材料を使った家が多く、子どもながらになぜ父は日本家屋にこだわった家を建てるのか理解できませんでした。
高校生を卒業後、京都に来て3年間建築を学び京都の工務店に就職。その後独立し多くの家やさまざまな工法を見てきた中で、今になって父のこだわってきたものの良さが理解できました。
京都には美山町の茅葺集落をはじめ京町屋・伊根の舟屋など、京都府内各地に伝統的な古民家が多数あります。
長年の歴史の中で、人々の生活や周囲をとりまく環境に合わせて独自に発展し、地域ごとにそれぞれの特徴を持ち現在に至ります。ですがその中で、時代の変化とともに残念ながら姿を消したものもあります。
古民家は、柱や梁などの木材、茅葺などの屋根、土壁や漆喰など、日本独自の風土や生活に根付いた自然素材でできています。解体時に再利用できる材料は多く、持続可能な循環型社会を作る上ではまさに理想形の一つだと考えます。そこには、様々な先人たちの知恵が生かされており、地産地消やエネルギー面から見ても、非常に優れた住宅といえるでしょう。
そんな古民家を一棟でも多く残すために私たち再築士は古民家の本質を理解し、細かな状況調査、安心して住めるよう現況に則した耐震診断、適切な改修計画を行ってまいります。
伝統的な古民家における専門家として、先人たちの築き上げてきた誇り高い日本の技術と知恵・文化を一棟でも多く次世代の子どもたちへ残していきたいと考えております。
古民家に関する相談、活用の方法、耐震の不安について悩まれている方お気軽にご相談ください。

一般社団法人日本伝統再築士会京都支部
支部長 島津 陽慎